2025-06-04
肩関節外科肩の疾患
肩が痛い
求心性が乱れている状態で腱板断裂、関節唇損傷、関節拘縮などが原因となることが多いです。
リハビリで改善がなければ手術が必要で早期手術が必要な場合もあります。
手術
- 鏡視下腱板縫合(ARCR)
- 鏡視下関節唇修復
- 鏡視下関節授動術
- リバース人工肩関節置換術
- 鏡視下腱板内方化手術(Ex)
- 鏡視下筋前進手術
- 鏡視下上方関節包再建(ASCR、大腿筋膜) など

肩がよく外れる
反復性肩関節脱臼と呼ばれ、手術が必要となります。
手術
- 鏡視下Bankart
- 鏡視下併用Bristow Latarjet など

求心位
肩の関節は球形の上腕骨頭と受け皿である肩甲骨関節窩との関係で成り立っています。
求心位 = 肩甲骨関節窩に上腕骨頭がうまく入った状態
求心位がくずれる原因は、腱板や関節唇の損傷、拘縮です。
リハビリ加療で求心位に戻らなければ手術が必要です。
術後も求心位をキープするためのリハビリが重要です。

腱板とは
腱板は肩甲下筋、棘上筋、棘下筋、小円筋の4つの筋腱で構成されます。
- 肩甲下筋(SSC) 内旋
- 棘上筋(SSP) 初期の外転
- 棘下筋(ISP) 外旋
- 小円筋(TM) 外旋

腱板断裂
加齢および繰り返す機械刺激、外傷を原因として腱板の腱線維が断裂した状態です。
40歳以上の男性で右肩(利き腕)に好発、発症年齢のピークは60歳、加齢変化で断裂を生じます。
60歳で4分の1、70歳で半数が断裂との報告もあります。
断裂しても症状がない人もいますが、夜間痛、動作時の痛みなど、症状がみられたら治療が必要になります。
2割くらいで両肩とも症状がみられます(時期は異なることも)。
振り子運動などの予防も必要です。

肩関節鏡手術とは
φ4mmの内視鏡を関節内に挿入、大量の水(アルスロマチック)を流しながら手術します。
- 三角筋を温存できます。
- 5mmほどの傷が3〜7か所程度。出血が少ない、侵襲の少ない手術。
- モニターを見ながら術野を共有でき安全.
- 常に洗浄、感染の可能性が低い.
骨に糸やテープのついたアンカーを設置して、腱板や関節唇にかけて修復します。
金属は基本体内に残りません。


リバース人工肩関節置換術 (RSA)
2014年日本国内に導入。
適応は65歳以上で腱板修復不能、挙上困難(偽性麻痺)に対して三角筋の力を利用して肩をあげる人工関節。
他に粉砕の強い骨折や高齢者の脱臼に対しても適応になることもあります。
術者の資格も必要です。
リバース人工肩関節の手術の傷は、5〜10cmほどです。
術後10日くらいで抜糸です。
抜糸してからシャワー許可しています。

反復性肩関節脱臼
脱臼を繰り返すことによって軽微な力(日常生活)でも脱臼してしまう状態です → 手術が必要です。
- 鏡視下Bankart
脱臼の第一選択となる手術。
前方関節唇(ストッパー)を関節窩(肩甲骨の受け皿)の上に持ち上げて脱臼しないようにします。
装具の理解できる年齢で適応. 中学生以上〜高齢まで - 鏡視下併用BristowもしくはLatarjet
ラグビー、柔道などのコンタクトスポーツ、てんかん、全身の弛緩性の病態、再手術例で行います。
烏口突起の骨を10〜20mmほど切って、関節窩の前でスクリューで固定、骨につく共同腱のスリング効果も手伝って、より強固な固定となります。
成長線が残っている年齢では①が優先です. 高校生〜

手術までの流れ
全身麻酔を行うための術前検査
- 胸部レントゲン、心電図、採血、尿検査、エコー等
- 肩のアンケート
- 麻酔科診察で全身麻酔の説明、既往歴などの確認

手術可能となれば
- 装具調整(義肢装具士)
- 手術説明(医師)
- 入院説明(看護師)
入院について
入院の平均日数は2週間です。(通常は手術前日の入院)
装具が自立すれば短期入院も可能です。(3、4日程度)
術前からリハビリもしくは自宅で装具練習することも可能です。
ノースリーブなど肩が露出する服、前開きのシャツなどがあると楽です。
かぶりものは、術後の肩に負担がかかります。
術後のガーゼ交換や着替えのためゆったりした服をもってきてください。

入院費概算(食事代含む)
高額医療費適用あり。
3割負担なら9万(1週)〜13万(3週)。
1、2割負担なら7万(1週)〜9万(3週)。
3日の短期入院プランなら4.5万〜9万。
| 手術名 | 負担割合 | 3日間 | 7日間 | 10日間 | 21日間 |
|---|---|---|---|---|---|
| 関節鏡下肩腱板断裂手術(簡単) | 3割/高額療養費適用額 | - | 約28万円/約9万円 | 約32万円/約10万円 | 約45万円/約12万円 |
| 2割 | - | 約7万円 | 約7万5千円 | 約9万円 | |
| 1割 | |||||
| 関節鏡下肩腱板断裂手術(複雑) | 3割/高額療養費適用額 | - | 約40万円/約10万円 | 約44万円/約11万円 | 約57万円/約13万円 |
| 2割 | - | 約7万円 | 約7万5千円 | 約9万円 | |
| 1割 | |||||
| 関節鏡下肩関節唇形成術(腱板断裂を伴う) | 3割/高額療養費適用額 | - | 約35万円/約10万円 | 約38万円/約11万円 | 約51万円/約13万円 |
| 2割 | - | 約7万円 | 約7万5千円 | 約9万円 | |
| 1割 | |||||
| 関節鏡下肩関節唇形成術(腱板断裂を伴わない) | 3割/高額療養費適用額 | - | 約25万円/約10万円 | 約29万円/約11万円 | 約42万円/約12万円 |
| 2割 | - | 約7万円 | 約7万5千円 | 約9万円 | |
| 1割 | |||||
| 関節鏡下肩関節授動術 | 3割/高額療養費適用額 | - | 約27万円/約9万円 | - | - |
| 2割 | - | 約7万円 | - | - | |
| 1割 | |||||
| 人工肩関節置換術 | 3割/高額療養費適用額 | - | - | - | 約63万円/約13万円 |
| 2割 | - | - | - | 約9万円 | |
| 1割 | |||||
| 関節鏡下関節滑膜切除術 | 3割/高額療養費適用額 | 約12万円/約9万円 | - | - | - |
| 2割 | 約6万5千円 | - | - | - | |
| 1割 | 約4万5千円 |
- 患者負担額の計算は全て平均年収の区分で計算しており、実際は収入により負担額が増減します。
- 月をまたいでご入院の場合はこの限りではありません。
- ご不明な点が御座いましたら、1階受付あるいは各病棟事務員にご相談下さい。
入院日
入院時間は外来で決まります。
- 看護師の問診
- 病棟案内
- リハビリの術前評価
夕方16時頃、手術開始時間の目安が決まります。
一般的に深夜0時から絶食となります。
飲水ストップは翌朝、手術開始時間によって決まります。
手術日
肩関節手術の手術時間は1〜3時間。
消毒、麻酔、装具、レントゲンなどで+1時間程度は手術室に滞在します。
| 手術時間の目安(状態で個人差があります) | |
|---|---|
| 拘縮 | 1時間〜1時間半 |
| 脱臼 | 1時間半〜2時間 |
| 腱板 | 1時間半〜3時間 |
| 人工関節 | 2時間〜2時間半 |
全身麻酔がかかってから、麻酔科医師がエコーを見ながら痛み止めのブロック麻酔をします。
術後はしばらく手がしびれています。
全身麻酔がかかってから座った状態になって手術します。
目が覚めたら手術は終わっており、病室に戻ります。

術後・退院の目安
手術翌日にガーゼ交換をします。
管を抜去すれば肩関節鏡の場合はシャワー許可になります(人工肩関節は抜糸してから)。
手術翌日からリハビリを開始します。
平日は1日2回、土日も急性期はリハビリを行います。
手指のむくみがみられる場合は肘を伸ばすことも必要になるのでリハビリのスタッフに伝えてください。

退院の目安
術後約10日で抜糸します(外来でも可能です)。
- 更衣動作の自立
- シャワーの自立

①②ができればいつでも退院可能です。
入院の平均日数は2週間です。
装具が自立すれば短期入院も可能です(3、4日程度)。
入院日数は手術成績に影響しません。
術前からリハビリもしくは自宅で装具練習することも可能です。
退院後の診察及びリハビリ
週1〜3回の外来リハビリ(最初は2回以上)。
連携するクリニック(当院リハビリスタッフが出向するクリニックもあります)でのリハビリでも問題ありません。
3〜5か月の外来リハビリが必要です。
現在当院では保険診療のリハビリは原則最長半年です. それ以上のリハビリには自費リハビリを推奨しています。
リハビリの時間だけではなく、リハビリのスタッフに教えてもらったことを自分で練習することが最も重要です。
腱板や関節唇が生着するのは4か月が目安です。
術後すぐに痛みがとれなくても心配ありません。
痛みが強ければ薬で対応できます。
すぐによくなる手術ではありません。
術後のMRI評価(菅谷分類)
術後に再建腱板の評価をMRIで行います。
肩関節鏡の術後は、1年程度の経過観察が必要です。
腱板を縫合した場合は2年のMRIも勧めています。
| Type1 | 腱板に厚み、一様に低信号 |
|---|---|
| Type2 | 腱板に厚み、一部に高信号混在 |
| Type3 | 連続性は保たれているが厚みがない |
| Type4 | 一部のスライスで連続性がない |
| Type5 | 連続性の途絶部分が大きい |
Type1(最もいい)〜5(最も悪い)。
4、5(再断裂)であっても求心位がとれていれば問題ありません。
再断裂で手術が必要になる割合は2割程度。
全国的に再断裂率5〜30%、当院は8.8%(315例中28例)。

腱板を縫合した場合
- 2-4週(断裂の大きさによります)で枕が外れてわきをとじられるようになります。
- スリングだけしばらく使います。
- 入浴(湯船につかる)も許可しています。
- 6週で自動運動(自分で動かす)開始。
- 自分の力で挙上90度(肩の高さまで手があげられる)を10秒以上保持できるようになれば自転車、車の運転が可能です(6週〜3か月)。
- (4〜)6か月で力仕事およびスポーツ復帰を段階的に許可しています。

リバース人工肩関節の場合
- 1週:レントゲン、CTで問題なければ、リハビリで動かす練習を開始します。
- 2週:枕が外れてわきをとじられるようになります。
- 3週:スリングも外して自分で動かす練習も開始します。
- 3-4週で退院、3か月の外来リハビリを推奨しています。
リバースは万能ではありません
痛みなく肩の高さまで手をあげられることが第一目標です。
目標:挙上120度 外旋30度 内旋は腰に手が届くくらい
インプラントが入っているので1年に1回のレントゲンチェックは必要です。
脱臼手術(鏡視下Bankart)の場合
ウルトラスリングを4週着用します。
- 1週〜:枕を除去して肩の運動を開始(リハビリで動かします)
- 2週:屈曲外転は90度まで
- 4週:外旋は0度まで
- 4週〜:スリングを外して自分で動かす練習を開始します
術後3-5か月の外来リハビリ。
(4〜)6か月で力仕事およびスポーツ復帰を段階的に許可しています。
手術を行っても、再脱臼をゼロにすることはできません。
リハビリで脱臼しない姿勢を意識する練習をします。

拘縮手術の場合
腱板や関節唇を縫合していない場合は安静度が違います。
ウルトラスリングの枕は痛みが落ち着けば除去可能です。
スリングは抜糸(10日程度)したら除去になります。
数日で退院も可能ですが、一度拘縮を起こすと術後動かしていないと拘縮を再発するため、痛みに応じた積極的なリハビリが必要です。
抜糸を終えたら入浴(湯船につかる)も可能です。
特に制限はありませんが、力仕事やスポーツは3か月が目安です。
術後成績・手術実績・よく寄せられる質問
術後成績
JOAスコアは90点が自分で治ったと感じる点数。
VAS=痛みの指標(0痛くない〜10ものものすごく痛い)。

手術実績
| 年度 | 肩関節鏡手術 | 人工肩関節 | 合計 |
|---|---|---|---|
| 2021年 | 193 | 9 | 202 |
| 2022年 | 194 | 21 | 215 |
| 2023年 | 248 | 18 | 266 |
| 2024年 | 235 | 17 | 252 |
よく寄せられる質問
痛くないですか?
一番痛みがあるときに麻酔が効いています。麻酔がさめてから痛みがでても薬で十分に対応できます。追加の薬もありますので、痛みがある場合は看護師に伝えてください。アイシングで冷やすことも除痛効果あります。
装具している間に字を書いたりできますか?
装具の先端は手がでています。装具を台においたりすれば、やりにくさはありますがマウスやパソコンも可能です。
自転車や車の運転はいつからできますか?
装具がはずれて自分の力で手を肩の高さまであげられるようになれば許可しています。手術の内容によりますが、概ね2週から2か月で可能になります。
シャワーや入浴はいつから可能ですか?
シャワーは手術後すぐに可能です。手術の内容によってはペットボトル装具を使用します. 入浴は抜糸を終えて、装具の枕がはずれていれば許可しています。湯船につかるのは2-4週から可能です。
仕事やスポーツはいつから可能ですか?
デスクワークは退院後すぐに可能ですが装具のある間はやりにくいかもしれません。重労働やスポーツは手術後4-6か月で許可しています。





