病気

腱板広範囲断裂

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2026-06-03

肩関節外科 MRCT 腱板広範囲断裂

当院の術式プロトコール

当院では、腱板断裂の大きさや脂肪変性の程度、軟骨変性の有無、患者様の年齢や活動量(力仕事など)を総合的に判断し、適切な手術術式を選択しています。

当院の術式プロトコール

腱板広範囲断裂の治療

腱板広範囲断裂の治療は難しく、高い再断裂率が言われています。2014年より日本でもリバース人工肩関節置換術(RSA)が使用されるようになりました。

現在、RSAの適応は原則65歳以上(以前は70歳以上)となっていますが、可動域制限や筋力低下のリスクがあるため、若年者には別の手術が推奨されます。

  • 高齢者: リバース人工肩関節置換術(RSA)が第一選択となります。
  • 若年者: ASCR(鏡視下上方関節包再建)、Ex(鏡視下腱板内方化手術)、または筋前進術が推奨されます。

ASCR(鏡視下上方関節包再建)

ASCRとは

腱板が肩甲骨関節窩(Glenoid)まで退縮した広範囲断裂に対して一次修復が不可能な時、ご自身の大腿筋膜を採取して移植腱(Graft)を作成し、これを腱板の代わりとして使用する手術です。

ASCR
特徴 ASCR リバース人工肩関節
再建の素材 生体(自家組織)での置換 人工関節
リハビリ リハビリは大変 リハビリは比較的簡素
術後の筋力 筋力がでる 筋力はでにくい(力仕事は不可)
年齢制限 年齢制限はない 原則70歳以上
術後の可動域 リハビリにて可動域改善の可能性あり 可動域制限が残る

手術の実際(鏡視下手術・大腿筋膜採取)

大腿筋膜(12cm×3.5cm程度)を採取し、折りたたんで厚み8mm・長さ6cmほどの移植腱(Graft)を完成させ、関節内に導入します。

鏡視下でのGraft固定

  1. 残存腱板の確認: 広範囲断裂にて肩甲骨関節窩(Glenoid)の骨頭が露出しています。
  2. アンカー設置: 肩甲骨関節窩(Glenoid)にアンカーを設置します。
  3. Graftの導入: 作成した大腿筋膜のGraftを関節内に導入します。
  4. 骨頭の被覆: 導入したGraftで上腕骨頭をしっかりと覆い、固定します。
手術の様子

ASCR後療法(リハビリプロトコール)

術後は外転装具(ウルトラスリング)を使用し、段階的にリハビリを進めます。

ASCR後療法
時期 内容・可動域の目安
術後〜4週 ウルトラスリング(大きい枕)使用
術後2週〜 完全固定。肘以遠の運動のみ可。
屈曲80度まで、外旋20度まで。
術後4週〜

屈曲100度まで、外旋40度まで。

ウルトラスリング(小さい枕)へ変更。

術後6週〜

屈曲120度まで、外旋60度まで。

介助自動運動開始。

術後7週 屈曲・外旋フリー。外転も開始。
自動運動開始。

Extreme-medialization(Ex:鏡視下腱板内方化手術)

鏡視下腱板内方化手術(Ex)とは

腱板が大きく退縮し、正常の付着部への修復が不可能な腱板広範囲断裂に対して行う術式です。

骨頭の上を削って腱板の通り道(肩峰下)を広げ、腱板を正常の付着部ではなく、削った内側の骨に縫合します。

骨頭の切削と腱板の通り道の拡大
内側への縫合の様子

Ex後療法(リハビリプロトコール)

時期 内容・制限
術後〜1週 装具(ウルトラスリング)使用。肩の可動域訓練(ROM)は禁止。
術後1週〜 段階的に肩の他動運動を開始。
術後4週〜 装具の枕を除去し、スリングのみに変更。
術後6週〜 スリングも除去し、自動運動を開始。
術後6ヶ月〜 力仕事を許可。
Ex後療法

各術式の比較とまとめ

手術術式の比較

比較項目 Ex(内方化手術) ASCR(上方関節包再建) リバース人工肩関節
アプローチ 鏡視下手術 鏡視下手術+Open 人工関節(直視下)
特徴 上腕骨頭を削る
手技は比較的簡単
大腿筋膜を使用
手術時間がかかる
最後の手段
腱板の必要条件 腱板が少しでも残っていれば可能 腱板が少しでも残っていれば可能 腱板がない患者に適応(広範囲断裂)
術後の筋力 中程度 出る可能性あり 出にくい
術後の可動域 良好な可能性あり 良好な可能性あり 特に内・外旋で制限あり
適応年齢 若年〜中高年 若年〜70歳くらい 高齢者
リハビリ 重要 重要 簡易(約3か月)

当院での一次修復不可能な腱板広範囲断裂に対して

以前は、70歳未満の方や70歳以上でも重労働をされる方にはASCRを、それ以外の方にはリバース人工肩関節を選択していました。ASCRの成績は概ね良好でしたが、手技が簡易で大腿筋膜を採取する必要のないEx(鏡視下腱板内方化手術)を2023年9月より新たに採用しました。

Exの長期的な成績はまだ不明な部分もありますが、短期経過は良好に推移しています。ただし、頻度は低いものの、再断裂はなくても挙上が90度程度にとどまる症例(高齢者やリハビリのコンプライアンスが低い患者様など)が散見されました。

そのため、2025年11月からは、腱板の内側の付着部を鏡視下に剥離(骨頭を削る必要がない)する「筋前進術」も採用しております。

当院では、患者様一人ひとりの症例ごとに適応を慎重に検討し手術を選択し、術後の成績・経過をしっかりとフォローアップしています。

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