2020-07-21
関節外科投球障害肩の病態
SLAP損傷や腱板損傷・断裂の状態(赤)まで進むと競技復帰に長時間を要し、手術を行ったとしても術前と同じレベルに復帰することが困難です。病状が進行しないよう早めに予防や治療(運動療法や投球フォームの修正、時に投球動作の禁止)を行っていくことが重要です。

肩関節内後上方インピンジメント
定義
肩関節後方の拘縮(硬くなり、動きにくくなっている状態)や肩甲胸郭、腱板(肩の周りについている筋肉)の機能低下が原因で発症し、SLAP損傷・腱板断裂になる一歩手前の状態。
肩関節後方の組織が硬くなると、振りかぶって肩が一番外側にしなる段階(=コッキング期)で、上腕骨が硬くなっている後ろの組織に引っ張られて、上腕骨が通常より後上方に移動。このコッキング期での上腕骨の後上方移動が原因となり、投球動作の度に肩の後上方で腱板と関節唇(=関節を安定させる軟らかい組織)が、衝突(=インピンジメント) を繰り返す。


肩甲胸郭の機能が低下している状態(特に肩甲骨を内側に寄せる機能が低下している状態)や肘下がり、体の開きが早い投球フォームでは、肩を必要以上に後ろ側、外側に広げることを余儀なくされるために、同様に肩の後上方で腱板と関節唇が衝突。

症状
投球動作のコッキング期で肩関節後方の疼痛や引っかかり。
治療
保存治療が原則。
安静(投球動作の禁止、ノースロー)、薬物、注射療法。
炎症が落ち着いてきた段階でリハビリ加療。
症状が改善しない場合は、関節鏡による精査や手術。
SLAP(肩関節上方関節唇)損傷
関節唇
楕円形の形をした肩甲骨関節面の縁を取り囲むように円状についている軟らかい組織で肘からくる上腕二頭筋長頭筋腱(LHB)と一体化しています。
SLAP損傷
肩関節内後上方インピンジメントの状態を放置、投球動作を繰り返すと関節唇損傷が悪化します。投球動作の度にLHBの牽引力が働き、関節唇はLHBと一緒に肩甲骨から剥離し、しばしば腱板断裂を合併します。

SLAP損傷の分類(Snyder分類)

手術
| タイプ | 適応手術 |
|---|---|
| タイプ1、3 | 変性した関節唇をシェービングして新鮮化する関節鏡下デブリードマンの適応 |
| タイプ2 | 損傷した関節唇を縫合・修復するSLAP修復術の適応 |
| タイプ4 | 必要に応じてLHBの修復(腱固定もしくは切除) |

SLAP損傷の術後リハビリ
| 時期 | リハビリ内容 |
|---|---|
| 手術翌日 | リハビリ開始 |
| 術後1日~1週間 | 他動運動は痛みに応じて開始 |
| 術後1週間 | ウルトラスリングの枕を外す |
| 術後1週間~3週間 | 自動運動は痛みに応じて開始 |
| 術後2~3週間 | ウルトラスリングを除去し、自動運動開始 |
| 術後6週間まで | 投球動作(外転位での外旋)禁止 |
目標
| 時期 | 目標 |
|---|---|
| 手術1ヶ月 | 日常生活は制限無し |
| 術後3か月 | 投球開始 |
| 術後6ヶ月 | 試合復帰 |
ウルトラスリング
SLAP損傷修復術を行った場合、スポーツ復帰はオーバーヘッド競技でおおむね 60%で術前と同程度、野球ではさらに復帰率は低くなることが報告されています。





